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①印象
②想像した姿・形
~デイリーコンサイス国語辞典~
恋愛におけるもっとも深刻な痛手は、知ったことよりも見たことから来る。
~ロラン・バルト 「恋愛のディスクール・断章」~
「恋愛のディスクール(言説)とは、
部屋の中を飛ぶハエの飛行にも似て、
およそ予測不可能な運動をする無数のフィギュール(型)群にほかならない。」
と述べているように、
「不在」「待機」「破局」「こころ」「告白」「やさしさ」など各断章がアルファベット順にならんでおり、興味があるところだけひろって読んでもかまわない、
むしろその方が正しい読み方なのかもしれません。
バルトの美しい文章を縦糸に、
ゲーテ「若きウェルテルの悩み」を主にさまざまな書物、格言、
音楽(俳句まで載っている!)を横糸に編みこんだ織物のような書物。
どの断章が興味深いものになるか、
それは読む人によってまったく異なってくると思います。
しかし、こんな文章を書けるバルトは本当にすごい。
そして、各章のタイトルがまったくもって内容にぴったりと当てはまっているというのは、
バルトの視線の確かさが表れているように思いました。
恋するわたしは狂っている。そう言えるわたしは狂っていない。
わたしは自分のイメージを二分しているのだ。
言語とは肌なのだ。
わたしはおのれの言語をあの人にすりつける。
指のかわりに語をもつというか、語の先に指をもつというか。
わたしの言語は欲望に打ち震えている。
贈物をすることは触れることであり、官能であるのだ。
あなたはわたしが触れたものに触れるだろう。
第三の肌がわたしたち二人を結びつけるのである。
恋愛というものは、言語(おしゃべり)をとおして欲望を通じ合わせているのかもしれません。
恋愛主体とその対象の肌、言葉という肌、贈物という肌。
もっとも衝撃を受けた「みだらさ」という章より。
あらゆる侵犯行為に対して社会が課す税金は、
今日、セックスよりはむしろ情愛の方に重い。
Xが性生活について『深刻な問題』をかかえているのであれば、
誰もが理解を示してくれるだろう。
しかし、Yがその感傷的情熱についてかかえている問題には、
誰ひとり関心をもとうとしない。
恋愛がみだらなのは、それが、セックスのかわりに感傷をおこうとするからである
今書かれている多くは感傷のかわりにセックスをおいたものではないかと思います。
逆にセックスについて書かないものが純愛としてもちあげられているぐらいで、
これを感傷というには疑問が残ります。
以前日記に挙げた三島由紀夫『三島由紀夫レター教室』にあった
氷ママ子の言葉が思い出されます。
人間はいくつになっても感傷を心の底に秘めているものですが、
感傷というのはGパンみたいなもので、十代の子にしか似合わないから、
年をとると、はく勇気がなくなるだけのことです。
こう考えると、三島由紀夫の視線の確かさにも感服。
2005/01/20 22:45
>ミワ
オハリーさん、こんばんは。
10年と少しの間で約1000円の値上がり・・・。
かなりの値上げ率でびっくりです(笑)。
男子学生に恋をしていた、ということにもさらに驚きました。
バルト自身はどんな恋をしていたのだろう、というのが気になっていたのですが、
そうだったんだ~。
作中の「わたし」や「あの人」「X」「Y」の性別もどちらか分からなかった
(わたしの見落としかもしれませんが)ので、
言われてみればそんな雰囲気もあったのかななんて思ったりしています。
初バルトだったのですが、この1冊でかなり好きになりました!
ドローイングもなんだか好きなんですよね。
2005/01/19 21:51
>オハリー
手元にある90年発行の版の値段をみると2700円ですから、
その後1000円値上がりしたんですね…。
この「恋愛のディスクール」執筆中、バルトは自分がおしえる男子学生(!)
に恋をしていたのだとか…その恋は成就しなかったそうです。
ところでバルト、僕も大好きな作家です(^-^)。
2005/01/17 23:58
>ミワ
恋愛のからくり、わかるようになっても、
この本がそばにあるということが人生を奥深いものにしてくれるんだろうなあと
しみじみ思います。
ゲーテ、わたしも気になって、
『若きウェルテルの悩み』もあわてて買い求めました(笑)。
でもまだ未読・・・。
『若き~』を読んでこの本を読んだらきっともっと発見があるような気がします。
「枠組みから外れちゃうのが恋愛」、そうですよね。
ちなみに、孔子や老子(だったかな?)も出てきていた気がします。
ケイさんは知識の引き出しが多くってびっくりです。
わたしも楽しかったです!
ケイさんとこのやりとりをできただけでもこの本を読んだ甲斐がありました~。
2005/01/17 13:35
>ケイ
私もお値段を見て、、びっくりしていたの~購入されたのですね。
ステキ!みすず書房で出る本って気になるんです。
いい本が多いと思う。
ミワさんが、恋愛のからくり、分かるようになっても、
きっとこの本は、人生を奥深いものにしてくれるのでは~と読んでいないのに思います。
ゲーテ、最近気になっています。良い買い物でしたね。
愛は、もうそれだけで、かき乱されるものですよねぇ。きっと。
それが本質なんだろうし、、
みだらさと純粋な愛情を分けようとすること自体、もうみだらなように思う、、
枠組みから外れちゃうのが、恋愛なんでしょうねぇ。
恋愛に旬のみなさまがまぶしいなあ、、
俳句までのっているというこの本、ほんとに興味深いです、、
楽しかったです。またね♪
2005/01/17 13:23
>ミワ
ケイさん、ありがとうございます。
この本を読みながらずっと
「バルトの言うことはものすご~く分かるんだけど、
でも実際に恋愛してるときって例えば『言葉は肌だ』、とか考えないよなあ」
と思っていたのですが・・・謎が解けました!
「見る暇がない」のですね。
だから年をとると似合わなくなってくるのか・・・。納得です。
愛って、ケイさんのおっしゃるように欲なんだと思います。
たぶん愛をきれいなイメージで捉えることが多いと思うけれども、
わたしはバルトの言うように「みだら」なものであっていいと思いました。
ケイさんに楽しいと言っていただけてうれしくなってついつい長文になってしまった・・・、
ごめんなさい。わたしもほんとに楽しいです。
みすず書房、個性的ですよね!最近とても気になっています。
でもとにかくお値段が高くて・・・。
この本も買うときにちっちゃい舞台から飛び降りる気持ち(笑)だったのですが、
買ってよかったなあと思います。
2005/01/17 11:56
>ケイ
こんにちは。とても興味深い本ですね。
恋と性愛の違い。言葉を通した欲望。
若いうちの恋愛は、こういったことを理性的にみないようにするものなのかもしれないな、、
見る暇がないというか、、
だから三島は、年をとると似合わないと思ったのかも。
恋にもエネルギーがいると、分別がつくとつまらないですね。ふふ☆
それにしても、最近の恋愛小説は、性的なものに引きずられて、
きちんとした感傷を置き去りにしているのかしら、、
純愛という言葉はね、、愛という言葉はもう欲だから、矛盾してるのかも、、
ミワさんとこんな話するの楽しいです。
いつもいい本を紹介してくださりありがとう。
蛇足ですが、、みすず書房って、出す本個性的じゃないかな~と思ってる私です。